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初めての
馴れ初め編から少し後の二人です。
時系列は分史ミラが仲間になってすぐ辺り。
うちのジュード君は相変わらず女々しいです・・・すみません

拍手[3回]


ありふれた風景の一つに、目が止まった。
人々で賑わうカラハ・シャールの装飾品売り場だった。
アクセサリーを選ぶ年若い恋人達。色とりどりの商品を手にとっては、楽しそうにお互いの顔を見詰めあう。
店主がそれを冷やかしながら言葉巧みに商品を勧め、彼は彼女にネックレスをプレゼントする事に決めたようだった。
なんていう事はない。本当にありふれた光景だった。
「ジュード、どうしたの?」
レイアに不思議そうに問われて、始めて自分がその光景に、ずっと目を向けていたのだと気付く。
そういえば足りないアイテムの補充を頼まれていたのだ。
レイアと二人道具屋まで歩く道程で、不意に目を奪われて立ち止まってしまっていた。
「ごめん、レイア。なんでもない」
「ならいいんだけど・・・早くいこ!」
笑顔を向けるとレイアはいつも通り元気に歩き出す。
幼馴染の後姿を見ながら、ジュードは目の裏に焼きついた光景に一人溜息を吐いた。

そこからずっと、頭からあの仲睦まじい恋人達が離れてくれない。
今日は久しぶりにトリグラフに戻ってきて、仲間達は各々自由行動を取っている。
ルドガーとエルは借金返済の為にクエストをこなしていたし、ミラはエルに引きずられて渋々手伝っていた。分史世界のミラにエルはとても懐いているようだった。ジュードも今日一日ルドガーとエルと、それとミラと共にクエストをこなしていたので、それがよく分かった。
他の仲間達も仕事や勉強に精を出している筈だ。
そのジュードは今、一人トリグラフのいつもの場所に立っている。
ルドガーのマンション前の公園から見る景色がジュードは気に入っていて、一人でトリグラフにいる時はいつもこの場所で景色を眺めていた。
3人と行動していたジュードが一人ここにいる訳は、ルドガーに次のように言われてしまったからだ。
『ジュード、疲れたんじゃないか?報告は俺達で済ますから、先に部屋に戻ってても大丈夫だから』
勝手に入ってくれていいから、と部屋の鍵を渡されて、ジュードは何も返せずこの場所にいる。
入ってくれていいと言われても、誰もいない他人の家に勝手に上がるのは気が引けて、公園で待つ事にした。
ルドガーに心配をかけてしまった。
考え事をしてぼーっとしている自分を見て、ルドガーは疲れているのだと思ったのだろう。
ただでさえたくさんのものを背負っているルドガーに、これ以上の心配はかけたくないと思っているのに。ジュードは夕焼けに赤く染まった景色を見ながら、最近多くなってしまった溜息をまた一つ吐いた。
ルドガーに対する特別な感情を自覚したのは、彼と出会って間もない頃だ。
レイアに約束を放り投げられて、一人途方に暮れていたトリグラフで声をかけてくれたのがルドガーだった。ルドガーにとってはなんていう事の無い出来事だったのだろうと、ジュードは思う。共に行動をしてからそれが良く分かった。ルドガーはとても優しい。
でも、ありがとうとお礼を言うと笑い返してくれたルドガーに、ジュードは恋をしたのだ。思い返してみるとこの瞬間だった。ジュードは一瞬でルドガーの事を好きになっていた。
ルドガーと再会したのは本当にすぐ後で、彼は瞬く間に日常からかけ離れた生活を余儀なくされてしまった。
一番傍にいたのに何も出来ない自分が、とても悔しくて。同時に落ち込んだ様子を見せても、決して弱音を吐かないルドガーの力になりたいと思った。
今置かれている立場だとか、環境だとか、男同士、だとか。
そういう事に悩む間もなく、勢いで想いを告げてしまって、ルドガーを酷く困らせてしまった自覚はある。
けれど、ルドガーは応えてくれた。
きっとルドガーはすごく悩んで、悩んで、考えて出してくれた答えだった筈で。ジュードはそれを疑っている訳ではない。
ジュードを好きだと言ったルドガーの気持ちは、本当だと思う。特別になりたいと言ってくれた彼の目は、嘘を吐いているようには見えなかった。
(僕達って、恋人・・・で、いいのかな・・・?)
好きだと告げて、好きだと返してくれた。
世間的には、恋人だと思っていいとは思うが、ジュードは些か自身がなかった。
ルドガーに好きだと言ってもらえた時にはあまりに嬉しくて、夢ではないのかと思わず泣いてしまったくらいで。我に返ると、ルドガーに引かれてしまったのではないかと不安になったが、ルドガーは何も変わらず接してくれた。
・・・そう、何も変わらないのだ。
それがここ最近のジュードの悩みだった。
恋人同士になったにも関わらず二人の間に流れる空気は何も変わらない。急激に変わるものでもないとジュードにも分かってはいるが、あまりにも何も変わらず過ぎていく時間に、ジュードは途惑い始めていた。
最初の頃はルドガーが応えてくれた事に舞い上がって気にする余裕もなかったが、カラハ・シャールでありふれた、ごく一般的であろう恋人達の姿を見た時、不意に我に返ってしまったのだ。
自分とルドガーの今の状態で、恋人だといえるのだろうか。
ルドガーは想いを告げてくれた時に抱き締めてくれたけれど、あのような甘い空気になったのは本当にあの時一度だけで。
自分から動いてみようとも思ったが、経験が全くないのでどうしたらいいのか全く分からない。
仕舞いにはあの言葉すら、同情ではないのか、と考えるようになってしまった。
ルドガーは優しいから。
もしかしたら、自分に気遣ってくれたのではないか、と。
一度浮かんでしまうとその考えばかりに囚われてしまって、ジュードは抜け出せない思考回路にただただ悩んでいた。
「ジュード、変」
急にかけられた声にびくりと身体が跳ねる。
振り返ると幼い顔に眉を寄せているエルと、少し困った顔で立っているルドガーがいた。その少し後ろに呆れたように腕を組んでいるミラがいる。
考え事をしていて三人が近付いてくるのに全く気付かなかった。
「あ、お、おかえり、みんな。報告はもう終わったの?」
「ああ。先に入ってくれていいって言ったのに」
「うん・・・でも、やっぱり待ってようかなって」
笑って答えたけれど、エルは更に眉間に皺を寄せてジュードの顔を覗き込んだ。
「やっぱりジュードへんー!」
「エル、ジュードは疲れてるんだって」
「・・・そうなの?じゃあ、ルドガー甘いもの!」
「は?」
何かを思いついたらしく顔を輝かせたエルに、ルドガーが首を傾げる。
そのルドガーの顔を見て、ルドガーはわかってないなーとエルは腰に小さな手を当てた。
「疲れたときには甘いものなんでしょ?エルがパパのお手伝いして疲れたーって言ったら、パパそう言ってお菓子くれたよ!エルね、チョコレートパフェがいいと思うな!」
「・・・それはあなたが食べたいだけでしょ」
ルドガーとジュードも思ったが言わないでおこうとした事をミラが口にすると、エルは頬を膨らませて反論する。
「違うもん!エルはジュードの為に言ったんだもん!」
「じゃあジュードだけがパフェ食べて、エルは食べなくてもいいのね?」
「い、いいよっ!エルはオトナのオンナだからパフェくらいガマンできるし・・・っ!」
必死に強がるエルの姿にジュードは頬を弛ませる。ルドガーを見れば同じ顔をしていて、ジュードは今日の夕食のデザートには間違いなくチョコレートパフェが並ぶだろう、と確信をした。
夕食は4人でルドガーの自宅のテーブルを囲んだ。
他の仲間達との合流は明日の朝で、となっているので彼らもそれぞれどこかで食事をしている頃だろう。
ジュードの確信した通りデザートに出たチョコレートパフェにエルが目を輝かせ、無邪気なその姿に他の3人は同じ様に顔を綻ばせる。
チョコレートで汚した口の周りをルドガーが拭いてやっている光景が微笑ましい。エルが照れながらお礼を言い、ルドガーは本当に優しく微笑み返す。そのルドガーの顔を見ているだけでジュードは胸が温かくなって、自然と顔が弛んでしまっていた。

そろそろ行くわ、と言いミラが席を立ったのは夕食の後片付けが終わってすぐだった。
「えー!ミラどこ行くの?!」
「宿よ。ここじゃ寝るところないし」
以前エルとルドガーと3人だった時にこの部屋に泊まったことはあったが、あの時はルドガーの気遣いからジュードとエルがルドガーのベッドで寝て、ルドガーはソファで寝ていた。
ルドガーのベッドを使うのはミラとしては複雑な気分らしい。ソファで寝るのも避けたいようでミラは当然といった顔でもう部屋を取ってあると言った。
「じゃあエルも一緒に行く!ルドガー、いいでしょ?!」
今日のエルはどうしてもミラと一緒がいいと譲らない。
ルドガーはエルに詰め寄られて、どう返事をしたらいいのか困っているようだった。
他の仲間になら軽く頼めていたかもしれないが、ミラは仲間になって日が浅いし、何より皆よりも態度が固い。迷惑なんじゃないかとルドガーは戸惑っていた。
しかし、ミラは一つ溜息を吐くと、観念したようにエルに笑いかける。
「・・・もう、分かったわよ。エル、ほら。行くわよ」
「やったー!ルドガー!ミラ、いいって!」
「いや・・・でも、いいのか?」
「いいも何も・・・引き下がってくれ無さそうだし、しょうがないじゃない」
途惑うルドガーにミラは渋々といったように頷いた。
けれど、その頬が僅かに赤く染まっていて、それが照れ隠しなのだと分かる。
純粋に懐いてくれるエルがやはり可愛いらしい。ルドガーもそれが分かって口元を弛ませた。
「じゃあ頼めるか?エル、ミラに迷惑かけないようにな」
「メイワクなんてかけないし!ルドガーこそジュードにメイワクかけないようにね!」
「分かってるよ」
そう言いあってすぐにミラとエルの二人が部屋から出て行った。
状況を見守っていたが、ここに来て気付く。ルドガーと二人きりだ。
(ど、どうしよう・・・)
意識してしまうと顔が熱くなってしまうのが分かって、ジュードは思わず俯いた。
赤くなった顔をルドガーに見られるのが恥ずかしかったからだ。
「ジュードはどうする?泊まっていくか?」
「う、うん・・・ルドガーさえ、良ければ、だけど・・・いいかな・・・?」
「構わないよ」
微笑まれて、また心拍数が上がったのが分かる。
一体自分はどうしてしまったのか。人を好きになると、誰もがこんなにおかしくなってしまうのだろうか。
何か話さないと、と思う。
でも、何か、と思えば思うほど何も出てこなくて、とりあえずジュードは途中だった研究の論文を進めることにした。明日の朝まで、ずっとルドガーと二人なのだ。時間はまだ長い。
少し他の事を考えれば冷静になれる気がしたのだ。
ルドガーはルドガーで武器の手入れを始めたようで。
ダイニングのテーブルを借りて研究の事に頭を切り替える。
しかし、ジュードは後悔した。思いのほか頭のスイッチが簡単に切り替わってしまったのだ。

「・・・ジュード、ジュード」
「え、あ・・・ルドガー?どうしたの?」
「集中してるとこ、ごめん。でももう遅いからシャワー入って寝たほうがいいかなって」
「え・・・?!」
言われて慌てて時計を見ると、もう日付が変わってしまっていた。
「もうこんな時間・・・」
「すごい集中力だよな。このまま放っといたら朝までやってるんじゃないかって思ったよ」
「ご、ごめん・・・っ」
「謝ることなんてないだろ?でも明日も早いからそろそろ寝たほうがいいぞ」
ルドガーの言う事は分かる。言う通り早く寝て、明日に備えるべきだと思う。
でも、ここで寝てしまったらせっかくの二人きりの時間を無駄に使ってしまう気がして。
(・・・そもそも僕が論文に没頭しすぎたのがいけないんだけど・・・)
ルドガーも疲れているだろうし、早く寝たいのかもしれない。でも、ジュードは出来るなら少しでも話をしたいと思った。
どうしようか椅子に座ったまま固まっていると、ルドガーがジュードの髪をそっと撫でる。
「・・・いつもありがとな。ジュードにもやるべき事があるのに、俺の事も手伝ってくれて・・・本当に感謝してるんだ」
言われて、笑いかけられて。嬉しい筈なのに、確かに嬉しいと思うのに、同時に寂しく思った。
頭を撫でられるのは、温かいけれどエルに対するものと同じに感じた。
かけられた言葉も、他の仲間達にも向けられている言葉と同じものなんだと分かった。
どれも優しい筈なのに、足りないと思ってしまっている自分が酷く我侭に見えた。実際、我侭なのだろう。
「・・・ジュード?」
俯いてしまったジュードにルドガーが心配そうに声をかける。
「ルドガーは、後悔、してる・・・?」
だめだ、と思ったのに口が勝手に開いていた。
「後悔って・・・何が?」
「僕に、好きだ、って言ったこと・・・」
「・・・っ」
ルドガーが息を呑んだのが分かる。
やっぱり同情で言ってくれてたんだろうか。思ってしまうと頭の中がその考えでいっぱいになってしまう。
ぐるぐると回る嫌な感情にジュード自身どうすればいいのか分からない。
「後悔なんて、してる訳ないだろ・・・なんでそんな事・・・」
黙ってしまったジュードにルドガーが困惑している。
ルドガーがどんな顔をしているのか怖くて見る事が出来ない。
でも、ここまで来たら全て吐き出してしまおう、と覚悟をして、ジュードは俯いたままぽつりぽつりと話しだした。
「この前、男の子と女の子のカップルがね、デートしてるところを見て・・・なんでもないことなのに、それが頭から焼きついて離れなくなっちゃって。恋人ってこういうものなのかなって、なんか・・・僕達と、全然違うなって・・・」
そこまで言うとじわりと視界が歪んだのが分かった。
自分はこんなに涙脆くなかった筈なのに。ここで泣いたらだめだ、とジュードは唇を引き結んだ。
ルドガーは止まってしまったジュードを急かす事なく待っていてくれる。こういう所が彼の優しいところなのだと思う。
「僕も、ルドガーも男、だし・・・同じように考えることじゃないって分かってるんだけど、少し寂しくなっちゃって。それで、もしルドガーが僕の事を、同情、とかで好きだって言ってくれたんなら、やっぱり後悔してるかなって思って。あ、あのね、本当に無理しなくていいんだ。僕も同情で付き合ってもらっても虚しいだけだし・・・だから本当の事、言って欲し」
「ジュード」
最後まで言い切る前にルドガーに名前を呼ばれる。同時に両腕を掴まれ、立ち上がるように引っ張られたので、促されるまま立ち上がった。
何がなんだか分からなくて目を瞬いていると、ひどく真面目な顔をしたルドガーと目があった。
「デートしよう」
「・・・え?」
真顔のままルドガーはジュードの手を引いて玄関へと歩き出す。
「え?え?ル、ルドガー?どうしたの?」
「だから、デートしよう」
「今から?」
「今から」
「・・・もう、真夜中だよ?」
「それでも」
展開に全く着いていけない。頭の中には疑問符ばかりが浮かんでいる。
状況が理解出来ないまま、ルドガーに引き摺られるようにマンションを出た。
手がずっと繋がったままなのが気になったけれど、夜も遅いから外を歩いている人なんてほとんどいない。いても酔っていたり騒いでいたり、自分の周りの事以外に目を向けなさそうな人達ばかりで。
思わずルドガーの手を握り返すと更に強く握り返されて、その強さにほっとした。
手を引かれるまま来たのはトリグラフ港だった。宿からは灯りが漏れていて人の気配を感じる。バーもあったから、大人達が酒を飲みながら騒いだり静かに語ったりしているのだろう。ミラとエルはここに宿を取っていると言っていた。他の仲間達も多分、この宿にいるのではないかとジュードは明かりを見ながらぼんやりと考える。
宿から離れたところで立ち止まると、そこは喧騒とはほど遠い。
昼間は人で賑わっている港も今は波の音しか聞こえない。
「そういえば夜のトリグラフ港は始めてかも・・・」
「俺もあんまり来た事ないかな」
「そう、なんだ・・・」
手を繋いだまま、ただ二人で並んで立っていた。繋がった場所ばかりが気になって下を向いていたけれど、ちらりと見たルドガーの横顔が空を見ているのが分かって、同じように空を見上げる。
ジュードも空を見たのに気付いて、
「リーゼ・マクシアの夜空はもっと綺麗だよな」
と、ルドガーがぽつりと漏らした。
「俺はずっとエレンピオスで育ったから、この空しか知らなくて。だから始めてリーゼ・マクシアの星空を見た時は驚いた・・・凄く綺麗で」
一緒に見上げた空は、確かにジュードが知る夜空よりも星は少なかった。都会であるトリグラフは夜でも人工の光が多いせいだろう。
「でも、僕はこの空も綺麗だと思うよ」
嘘でも、お世辞でもなかった。ルドガーと並んで見上げた空を、ジュードは本当に綺麗だと思ったし、同時に愛しいと思ったのだ。
ジュードの記憶よりも少し薄く輝く星を見ながら、ルドガーはどういう思いでここに自分を連れてきたのだろうかと思う。
デートしよう、とルドガーは言っていた。それは分かる。
手を繋いで、星空を見上げて。
恋人らしい事をしたい、と言ったジュードを哀れに思って、ここまで連れてきたのだろうか。
「・・・ジュード」
不意に、名前を呼ばれてルドガーに顔を向けると、唇にあたたかい何かが触れた。すぐに離れたそれが、ルドガーの唇なんだと理解するのにそう時間はかからなかった。
呆然としているジュードにルドガーの顔がまた近付いてきて、もう一度触れた。反射的に目を閉じて受け入れる。何度か小さく触れ、次に深く重なる。口内に入ってきた柔らかいそれにそろり、と確認するように縮こまっている舌を舐め上げられる。恐る恐る返すと、口付けは徐々に激しくなっていき、ルドガーに抱き締められながらジュードも彼の身体に縋るように抱き付いた。
「ふ・・・っ、あ・・・」
鼻に抜けたような声が唇の隙間から漏れ出す。酷く甘い声に、それが自分の口から出たものだと思うと恥ずかしくて堪らなくなる。
「・・・っは・・・」
唇が離れると、更に強く抱き締められた。
そして、耳元にルドガーの唇が当たって、ルドガーが小さく息を吸い込んだのが分かった。
「・・・ごめん」
言われた言葉に一瞬、身体が凍りつく。
やっぱり、と思った。けれど、ルドガーの言葉は終わりではなくて。
「不安にさせて、ごめん。後悔なんてしてない。ジュードが好きだ。本当に、好きなんだ」
「ル、ドガ・・・」
「その、改めてジュードの顔を見ると恥ずかしくて・・・どう、したらいいか分からなくて・・・。そんなにジュードが悩んでるなんて気付けなかった。本当に、ごめん」
続けられた言葉がじんわりと身体に染み込んでいくようだった。
嬉しい、という事を伝えたかった。でも口が上手く回らない。もどかしくて目の前のルドガーの身体を強く抱き締め返す。
ルドガーは答えてくれるかのようにぎゅうっともっと強くジュードを抱き締めて。息が止まりそうなくらい強いその力に、ジュードは思わず笑ってしまう。
「ふ、はは・・・」
「ジュード?」
「ごめん、嬉しくて・・・」
少し離れて見たルドガーの顔は、夜目で見ても赤くなっていた。
可愛い、と思い自分から唇を寄せる。しっとりと重なってから離れて、もう一度お互いの顔を見合う。
「・・・僕の故郷はね、ル・ロンドっていう町なんだ」
「・・・うん」
赤くなったルドガーの頬に触ると、少しだけ熱かった。自分も同じ様に頬を染めているのだろうか。
そう思うとなんだかくすぐったくて、ジュードはそれを誤魔化すかのように話し始める。
「すごい田舎で、観光名所とかもないんだけどね・・・何もない分、とても星が綺麗に見えてて・・・」
「へえ・・・見てみたいな」
「きっと驚くよ・・・それに、僕の通ってた医学校は夜域っていう霊精下にあるイル・ファンにあってね・・・」
「聞いた事ある・・・ずっと夜なんだよな?」
「うん・・・街灯樹っていう発光する樹がたくさんあって、街の灯りが凄く綺麗なんだ」
「それも、見てみたいな・・・」
「いつか、一緒に見ようね」
「ああ・・・・・・頑張って借金返すよ」
「僕も手伝うよ」
言ってから二人で吹き出して笑った。
ひとしきりくすくすと笑ってから、帰ろうかと手を引かれて頷く。
帰り道でもずっと繋がれたままの掌の温もりがずっと傍にあってほしいと、ジュードは静かに願った。


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