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馴れ初め編・前
ルドジュの馴れ初め話。
時系列としては分史ミラが仲間になる前くらいの頃です。

拍手[10回]


「ルドガーの事が、好き、だから」

そう言われたのはいつだったかとルドガーは思い返す。
最近色々とめまぐるしく状況が変わっているせいで、随分と前の事にも感じるけれど、実際はそんなに時間が経っているわけではない。
そう、なのだ。
濃い時間は過ごしているが、長い時間を共に過ごしたわけでもない。
なのに何故、何で自分に、とルドガーは未だに首を傾げる。
「ルドガー!ジュードってほんとすごい物知り!」
物思いに耽っていたルドガーに、エルが体当たりをするようにしがみついてきた。
あまりの衝撃にエルがよっぽど興奮している事を知る。
何事か、と思っているとジュードが少し困ったように、ルドガーに笑いかけた。
「珍しい蝶々がいたから、エルに教えてあげてたんだ」
「すっごいキレーなの!青と、黒の羽でね!ルドガーも見れば分かるよ!名前はね、ええっと・・・」
なんだっけ、と笑うエルにジュードがもう一度教えている。
長い名前のそれを、エルが難しい顔をしながらそれでも一生懸命覚えようとしている。
その様子にルドガーが頬を緩めると、ジュードも同じ様に柔らかく笑っていた。
好きだ、と言われた。
ジュードに。
『あれ、は・・・告白だよな?』
好きなのだ、と琥珀色の瞳を潤ませて必死に訴えかけてきていた。
昔同級生にされたような間違いのものではなく、本当に告白されたのだ、ジュードは、ルドガーに好きだと言ったのだ。間違いなく告白だった、とは理解している。
エルにじゃれつかれているジュードに目を向けると、ちょうど目が合って、
「なに?」
と、優しく笑いかけられる。
「いや・・・本当にジュードは物知りだなって」
「そうかな」
少し照れたように笑うその顔は、年相応に少し幼くてルドガーも思わず笑ってしまう。好きだ、と言われたまではいいが、ジュードはその片鱗を全く見せない。

ジュードに思いを告げられたのは、まだエルとジュードと三人での、旅を始めたばかりの頃だった。
テロに巻き込まれ、莫大な借金を背負ってしまい途方に暮れていたルドガーをジュードは優しく慰め、力になってくれた。
見ず知らずの他人と変わらない自分に何故そこまでしてくれるのか。心底のお人好しだ、と本当に思う。
だから言ったのだ。
今でもよく覚えてる。トリグラフまで帰るのにクエストをこなして、なんとか借金を返そうと躍起になっていた。返済の目処はたったもののもう夜も遅く、ここからエルを連れて出歩くのも、と思いドヴォールで宿を取った時のことだ。
お世辞にも綺麗といえない部屋に三人で入り、エルとルルはすぐに気持ちよさそうに寝息をたてていた。
ジュードが、先にシャワー入ってきたら?と進めてくれるのに、少しささくれていたルドガーの気持ちがそっと凪いで行くのを感じた。
柔らかく笑いかけられて、自然と口から出ていたのだ。
『なんで、ジュードは俺にそこまで優しくしてくれるんだ?』
『困っている人を助けるのは当然でしょ?』
『いや・・・、だけど困ってるの次元が違うし・・・』
普通の人は関わるのも嫌だろう、とルドガーは自分のことでも思うのに、ジュードは当たり前のような顔をして傍にいてくれる。
ルドガーが困ったように俯くと、ジュードは眉を寄せて首を傾げた。
『やっぱり、迷惑、かな・・・?』
『そんなわけないっ!ジュードがいてくれて本当に助かってるんだ!』
ありがとう、と告げるとジュードは本当に嬉しそうに笑って、ああ、いい子だな、と心底思った。
それと同時に少し心配になってしまう。
『ジュードって、誰にでもこういう感じなのか?』
『こういうって・・・?』
『その、優しいっていうか、親切っていうか・・・』
『お人好しってこと?』
『まあ、そうだな・・・でもそのお陰で、俺はすごい助かってるけどさ』
誰にでもこんな調子だと、すぐに誰かにだまされてしまいそうで。
『ジュードは凄いいい奴だから心配だな』
一番心配されている俺がいうのもなんだけど、と付け加えて笑うとジュードはふいと目をそらして俯いてしまった。
その様子に、言いすぎただろうか。何か傷つくようなことを言っただろうか、とぎょっとする。
一人慌てていると、ジュードは今にも泣き出しそうな顔でルドガーを見つめ、そっと口を開いた。
『・・・昔、は、確かにそうだったけど、今は誰にでもって訳じゃないよ・・・』
『そう、だよな・・・!ごめんっ!俺知らないうちにひどい事言ったみたいで・・・』
『ううん、違うよ。ルドガーは何も悪くない・・・僕が、ルドガーの力になりたいって思うのは・・・』
その唇が震えているのが分かって、ルドガーは息を飲んだ。ジュードが今にも泣き出しそうに見えて。
『ルドガーの事が、好き、だから・・・』
続けられた言葉をルドガーはすぐに消化することが出来なかった。
なんだ、今なんと言われたのだ。
完全に固まってしまったルドガーに、ジュードはまだ付き合いの浅いルドガーが見てもわかるくらいの作り笑いで笑いかける。
『・・・なんて、ごめんね!急に、こんな・・・知り合ったばっかりで、なのにこんな事言われても困るよね!僕、男だし・・・ルドガー大変なのに困らせるようなこと言って、本当にごめん・・・っ』
『い、いや・・・あの・・・』
『無かったことにしてくれていいから!本当に、本当にごめんね・・・!』
先にシャワー使わせてもらっていいかな、とジュードが聞くのに何も考えずに頷いて、ぽつんと一人取り残されて。
何も知らずに寝息を立てている一人と一匹の幸せそうな寝顔を見る。
困ったのは、本当だ。だけど、思ったのは。
『あんな作り笑い、ジュードには似合わないな・・・』
泣き出したいのを無理に堪えて作ったようなさっきの笑顔。あんな顔よりも、本当に嬉しそうに笑った、あの笑顔の方がよっぽどいいのに。
ジュードがシャワーに入っている水音を聞きながら、ルドガーはそのまま寝てしまっていた。

それから、何も無い。
朝起きたらジュードは何も無かったようにルドガーに接するから、ルドガーも何も言えずにずるずるとここまで来てしまった。
正直、借金の返済に追われ、たった一人の家族である兄が指名手配犯になりであまり考える余裕も無かった。
けれど、ふとした時にあの時のジュードの表情や言葉を思いだしてしまう。頭から離れないそれに、ルドガーは胸を燻られていた。
ジュードは本当に、ずっと変わらない。三人から始まった旅は、今ではジュードの仲間だったというレイア、ローエン、アルヴィン、エリーゼの四人が増えて賑やかになった。
四人ともジュードが言うように本当にいい仲間で、皆ルドガーのことを親身になって考えてくれ、共に行動してくれる。少し前まではまだ構えていたエルも、この短い間で笑顔になることが本当に多くなった。
辛い旅ではあるけれど、皆の優しさに救われたのか、少しだけ心の余裕を持つ事が出来るようになってきていた。
だからこそ、尚更、あの時のジュードの言葉が、声が、気になってしょうがない。
「・・・あの、さ、ジュード・・・」
「ん?」
勇気を出して、何もない風に、今ならなんとなくで切り出してしまえるのではないかとルドガーが口を開くと、またジュードは何もないような顔でルドガーに笑いかけてくる。
あれは、夢だったのか?
思わずそう聞いてしまいそうになるくらい、ジュードからは何も感じられなくて。
ルドガーが先を言えずに押し黙っていると、レイアがジュードを呼ぶ声が聞こえてはっとする。
「レイアが呼んでるみたい・・・ごめん、行くね?」
「あ、ああ・・・」
走り去っていく後姿を見ながら、ルドガーは一人溜息を付いた。
自分はどうしたいのだろうか。今更、あの時の事を返して何がしたいというのか。
あの、不器用な作り笑いを思いだして思わず眉を寄せる。
(俺は、またあんな顔をジュードにさせようとしてるだけじゃないのか・・・?)
「ルドガー?どうしたの?」
心配そうにエルに顔を覗き込まれて、ルドガーは自身が物思いに耽っていた事を知る。
エルにまで心配させてしまった事に、苦笑しながらその小さい頭をぽんぽんと撫でた。
「なんでもない・・・そろそろ晩飯の時間だな。何にしようか?」
「エルね、マーボーカレーがいいっ!」
「エル用な」
「エル用ねっ!」
言いながら手を繋いで笑い合うと、少し遠くに見える仲間達の元へルドガーは足を進めた。





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